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Q&A:ユーロ壊滅のようなシナリオが発生するとしたら?

【著者】

ギリシャ問題からポルトガル、スペイン、イタリアなどへ飛び火していき、ユーロ壊滅のようなシナリオが発生するとしたら世界がどんな状況になったときでしょうか?

ユーロが抱えている構造的な問題は、どの国も固有の通貨、固有の金利といった固有の金融政策を持たないことです。これでは、地域差や個々の国々が持つ特性による固有の経済問題に対処することができません。

もっとも、日本政府が災害地域への復興予算を組むような、1つの財政で対応できれば何とかできるのですが、財政は別々なために、何らかの事情で税収が落ち、財政収支が悪化した国々には、緊縮財政が強いられています。ギリシャなどは短期国債の発行という短期の資金調達すら制限を受けています。つまり、固有の財政政策の自由も事実上奪われています。

経済政策の2本柱は金融政策と財政政策ですから、ユーロ圏の国々には固有の経済政策が事実上ないことになります。

国際機関に限らず、組織のどこでもそうですが、実際に組織を動かしているのは人です。ユーロ圏の国々には固有の経済政策がないとはいえ、ユーロ政府、あるいは欧州中銀の政策は誰かが動かしています。私がユーロの誕生前からずっと観察してきた見方では、欧州中銀を実際に動かしているのはドイツです。

このことはユーロ圏の問題とドイツの問題とが一致した時には、ユーロの危機が起きる確率は高くないと言えます。反対に、2007年の米サブプライムショックの時に顕著であったように、一致しない時には、ドイツの事情が優先され、他の諸国に危機が訪れる可能性が高まるのです。

突発的な事件以外で、今考えられる危機の可能性シナリオは、欧州中銀による量的緩和の終了時です。ドイツの景気が回復し、インフレ懸念が出てきた時に、欧州中銀が緩和政策を継続する可能性は高くないと見ています。その時に、他のユーロ圏諸国が同じような経済情勢ならば何も起きません。しかし、万一、どこかの国が金融引き締めに耐えられない状態だったとしたならば、2008年に起きたことが再燃する可能性が高まるのです。

その意味では、現状のようにドイツ経済がもたつき、量的緩和の継続が予想されている時の方が、ユーロ圏の他の国々は一息つけると見ていていいかと思います。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。