FXコラム

Q&A:消費増税先送りで、財政健全化は大丈夫?

【著者】

Q:首相が消費増税先送りを決め、衆院解散を表明しました。消費増税先送りについて、新聞報道では、点検会合での「予定通りに増税せよ」が67%と、増税賛成派が多数を占めるとあります。また、消費増税先送りに、財界はしぶしぶ容認ともありました。私も、財政健全化は重要だと思いますが、どうお思いでしょうか?

A:私自身も、財政健全化は重要だと思っています。今回の解散総選挙は「争点がない」と言われていますが、同じように「財政健全化」の重要性については、増税賛成派も、反対派も共通の思いです。問題は、健全化の方法で、増税で健全化が達成されるという見方が、有識者3人のうち2人。むしろ減税で健全化が達成されるというのが有識者3人のうち1人であることが、先の点検会合で判明しました。

一方、米欧諸国は、消費増税先送りに理解と報道されています。米は金融危機後に未曾有の金融緩和という景気刺激策で財政赤字を急減させ、欧州諸国は当初は増税+歳出削減で財政赤字をかえって急増させたものの、2年ほど前から景気刺激策を取り入れ、財政赤字が減り始めたからです。財政再建には、増税よりも景気刺激ということが明らかになっています。

ご質問に対してという訳ではないのですが、興味深い記事が日経新聞にありました。

参照:外国人観光客、変わる日本みやげ「三種の神器」 編集委員 永井伸雄
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO79766800V11C14A1000000/

(以下、抜粋引用【内:矢口】)
外国人観光客の買い物姿が一段と目立つようになってきた。円安が進んだうえ、10月から消費税の免税対象が拡大したことが大きい。中国人客が支払いに使う銀行・クレジットカード「銀聯(ぎんれん)カード」の10月の決済総額は前年同月の2.3倍と、300億円の大台に乗ったもようだ。決済単価も上昇傾向にある。2011年に2万5千円程度【80円=312.5ドル】だったが、直近は3万円【115円=260.87ドル】を超える。

外国人向け売上高の割合が10%にのぼる東京・銀座の三越銀座店。地下1階にある化粧品売り場の10月の売上高は、前年同月に比べて4割増えた。10月から5千円超50万円未満であれば消費税の免税対象となったことで「外国人観光客のまとめ買いが増えた」(同店)。化粧品とともに免税対象となった日用品も売れ行きが急伸している。

観光庁によると訪日外国人客の買い物総額は7~9月だけで1845億円(飲食費を除く)にのぼる。4月の消費増税後、消費の回復にもたつくなか、【円安と免税で】外国人観光客の存在感は高まる一方だ。

【内:矢口】の部分に注目頂きたいと思います。上記の記事では、銀聯カードでの決済単価も上昇傾向にあるとし、円価だけを書いていますが、2011年時と、直近のドル円で計算すると、ドル、あるいは中国元での決済単価はむしろ下降傾向にあります。それでも、円価では増え、小売店の売り上げ増となるのですから、円安は内需に大きく貢献するのです。

また、免税も消費増の大きな要因とあります。ここでも増税は景気に悪影響を表すことが明らかとなっています。

では、減税で売り上げ増の恩恵を受けるはずの財界は、なぜ増税先送りにしぶしぶ容認なのでしょうか?

ここでは、単純な足し算引き算で答えがでます。消費増税のマイナス分を、法人減税のプラス分で補って余りがあれば、消費増税に賛成できますよね? また、公共投資などを受注できれば、消費増税のマイナス分など小さい小さい。

消費税とは国民全体から広く薄く取る税金です。今回の増税分は社会保障費に充てるとされていますが、そうすれば他の財源が厚くなります。つまり、その分捕り合戦に加わろうとしていた財界、企業は、先送りにしぶしぶとなるのです。

日本の財政再建策の特徴的なのは、増税+歳出削減で、財政の健全化を図るものではないことです。そんなことをすればデフレに逆戻りなのは誰にでも分かります。日本の政策は増税+歳出増ですから、大きな政府に任せておけば、日本は良くなるという考え方です。有識者の考えそうなことでもあるのです。

大きな政府とは、大きな財源を持つ政府です。必ずしも公務員の数を増やすわけではありません。より大きな財源とは、より大きな権限、権力を意味します。取り入ろうとする財界や圧力団体だけでなく、汚職や不正の温床ともなるのが古今東西の歴史です。

私は、安倍首相の消費増税先送りを英断だと評価しています。とはいえ、確かに選挙での争点は難しいですね。消費増税先送りするなとさんざん言っていた野党も、いつの間にか容認ですし、与党も消費増税先送りするなと言ってましたからね。なかなか政治とは厄介なもののようです。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
最新記事:16/12/5「イタリア国民投票の焦点