FXコラム

国の富を増やすサービス黒字

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FXコラム|2014/04/23

関連記事:国の富を増やす貿易赤字?
https://fx.minkabu.jp/hikaku/fxbeginner/trade-deficit-to-increase-the-wealth-of-the-country/

貿易赤字が国の富を損ねるとの理論を展開したいのなら、1976年以降、一貫して巨額の貿易赤字を計上している米国がなぜ世界一の富を有しているのかの矛盾に言及する必要がある。確かに、貿易赤字で国が貧しくなるというのは「通説」ではあるが、通説を無批判に前提として「自説」を展開するのは怠慢だ。これは個人攻撃ではない。大半の識者が同じことをしているので、そういった風潮を攻撃している。

前回の表は、赤字が定着した1976年以降のもので、左端の年代の隣が貿易収支だ。マイナスは赤字。右に行く順にそれぞれ、モノの貿易収支、サービス収支、輸出総額、モノの輸出総額、サービス輸出総額、輸入総額、モノの輸入総額、サービス輸入総額となっている。

左下2013年の米貿易赤字は4748億6400万ドル。102円60銭換算で、48兆7210億円となる。同じ2013暦年の日本の貿易赤字は11兆4684億円と過去最大だったが、その4倍以上もの赤字だ。これらを見ていると、「国の富を増やす貿易赤字」というコメントの方が説得力がありそうだ。

参照表:米国貿易収支(1976年~2013年)
Services surplus

参照:U.S. Trade in Goods and Services 1960 through 2013
https://www.census.gov/foreign-trade/statistics/historical/gands.pdf

ところが、貿易収支とは、表にあるように輸出総額と輸入総額との差額でしかない。そこにどれだけの収益が絡んでいるかには関心がないので、「富」と結び付けるのには無理があるのだ。関連付けに意味があるのは「為替レート」だ。差額分の通貨需要が起きるからだ。

この表の左端の年代を除いた3番目のサービス収支に注目してみては如何だろう。一貫して黒字となっている。サービス収支とは、旅行、運賃、輸送費、特許及びライセンス収益、他の民間サービス収益、政府のその他サービス収益となっている。つまり、この黒字は収益と強く結びついている。

サービス収支には旅行など「為替レート」の恩恵を大きく受ける項目がある。こうしてみると、モノの貿易赤字による通貨安と、サービス黒字との組合せが、国の富と強い関連性があるとの仮説が立てられるようになる。

[GMO]

矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。