中小企業、「人材確保」で賃上げ

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FXコラム|2014/08/21

経済産業省は15日、全国の中小企業3万社へのアンケート(回答1万0380社)で、今年度に何らかの賃上げをした企業が昨年度の57%から、65%に上昇したと発表した。

賃金全体を底上げするベースアップをしたのは全体の23%。賞与や一時金を増やしたのは31%だった。賃上げをした企業の割合は、全国9地域すべてで昨年度を上回り、賃上げの動きが地方の中小企業にも広がっている。

賃上げの理由は、「従業員の定着や確保」の76%が最も多く、次の「業績回復の還元」の29%を大幅に上回った。政府が実施した復興特別法人税の前倒し廃止や、給与を増やした企業を優遇する税制が賃上げを「後押しした」とした企業は8%にとどまった。

安倍政権は、これまでの多くの政権の例に違わず、大きな政府を目指している。増税して過去最大規模の財源を持ち、景気対策に1兆円の追加歳出増という、国民からより多く徴収し、より多くの資金を政府の裁量で使うというものだ。二人三脚の役所は、箸の上げ下げにも口を挟むような、多くの細かな指導を行っている。とはいえ、看板である女性の登用も、賃上げも、民間は政府の指導通りには動かない。

それは当然で、個々の企業はそれぞれの分野で独自の状況に直面しており、一律に指導されても、従いようがないからだ。政府の指導は、懲罰でも伴わない限り、概ね自己のニーズに適った場合にだけ受け入れることになる。その意味で、大きな政府は、政府を支えるコスト上昇の意味でも、経済成長に役立つ意味でも、不効率だといえる。

円安ブレークは2012年10月から、株高ブレークは2012年11月からと、12月末に誕生した安倍政権とは直接には関係がない。もっとも、2013年4月の異次元緩和はベースで効いているし、今後、さらに効いてくると見ている。本来、ベースマネーの効果とはそういうものだからだ。公共投資は建設セクターを引き上げたが、急激な政策主導で人手不足という歪みを生んでいる。

その意味では、いったんの景気回復も、企業業績拡大も、アベノミクスという政策で達成されたというより、円安効果が大きいと見た方が自然だ。100円台というこのレベルの円安でも一息がつけるし、110円方向に抜けてくると、もう一段の回復が望めるのだ。

インフレ政策や公共投資は「一部が先に豊かになり、後で全部を引っ張り上げる」という、どこかの大きな政府が採った政策に似ている。インフレで実質賃金は減少しているが、企業収益が還元され、いずれは賃金の上昇率がインフレを上回るという期待だ。そうでなければ、国民は騙されたことになる。

消費増税は前野田政権が自らの政治生命をかけて決定し、一方で2012年度に発行した年金特例公債2.6兆円の、元利金返済の財源を消費増税で充てるとした。すでに返済条件を決めて借金しているので、安倍政権では余程のことがない限り、破棄できるものではなかったことになる。これをもって、安倍政権が弱者いじめの政治、経済音痴だと決めつけるのはアンフェアかもしれない。

しかし、8%から10%への増税では、安倍政権の正体が見えるかと思う。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。