損切りと、損切りオーダーの違い

【著者】

:FXで(スイスフラン・ショックのような)異常な値動きの時には、損切りオーダーがつかない。強制ロスカットもされないケースが起こり得ることについて、内部のお話もいただけまして、大変参考になりました。

その中で気になることがあるので、引き続き教えていただきたいことがあります。もしよろしければ、損切りのメリット、デメリットについて詳しく教えていただきたいです。

先生はディーラーをされていた時、損切り注文はいれないということですが、反対注文をいれてヘッジされていたのでしょうか。

単純な確率だけを見ると、相場での上げ下げは共に50%の確率です。小さな波動も含めれば、この確率が60%、40%に偏ることはまずありません。にも関わらず、多くの人(6割以上)が相場は儲からない。大損したと嘆いています。これは、ある意味で、不思議なことです。

買って下げて、大損した人がいるとすれば、そのやり方で、自分が売り手に回っていれば大儲けできていたことを示しています。つまり、売って下抜けしたところで、ずっと様子を見ていればいいのです。ここですぐに買い戻してしまえば、利益はミニマムで、なかなか儲かりません。

大儲けが難しいという、反対方向から見ても明らかなのが、大損は避けられるということです。どうすればいいか。この場合は、下抜けでの損切りです。

損切りは、損の拡大を防ぐために行います。下抜けなどで、評価損が拡大しそうな時には、損切りにより、損失をミニマムに抑えることができます。これは、明らかなメリットです。

ここで注意したいのが、損の拡大がそれほど懸念されないような時には、損切りによる損失確定はデメリットでしかないということです。そのような場合には、損切り価格が最安値となり、その後、急騰するようなことも起こります。

難しいですよね。難しいので、私も一般的にお話しする場合には、「損切りは最も大切だ」と申し上げています。兎にも角にも、損失の拡大を防ぐことが大事だからです。しかし、個別のケースバイケースのご質問には、損切りは重要だが、損切りオーダーは、メリットよりも、デメリットの方が多いと申しています。

損切りと、損切りオーダーの、どこが違うのか?

損切りはあなた自身が行います。損切りオーダーの損切りは、あなたが託した業者が行います。ここが決定的な違いです。

あなたが行う損切りは、下抜けなどで、評価損が拡大しそうな時に行います。業者が行う損切りは、下抜けなどで、評価損が拡大しそうな時だけでなく、損の拡大がそれほど懸念されないような時にも行います。むしろ、業者にとっては、そのような時に損切りオーダーをつけることが、大きなメリットとなるからです。あなたのオーダーは最安値で執行されます。買うのは、その業者です。

例えば、あなたが107円99銭に損切りの売りオーダーを置くとします。108円台には買いオーダーが並んでおり、108円台は守られそうな雰囲気であったとします。

そういった時、ディーラーは108円の買いオーダーを潰そうと、売りで攻めます。そして、一瞬でも108円を割り込めば、損切りオーダーが執行されます。ディーラーは自らの売りポジションの買い戻しを、あなたの損切りオーダーで行うことができます。特にロンドンのディーラーには、そういったことで食っている人達が大勢いるのです。その後は、108円近辺で買いたいと思っていた人が続々と表れて、場合によっては急騰します。そうでなくても、安く買っていれば、どこかで利食えます。最安値で売ったのはあなた。最安値で買えたのは、あなたが託した業者です。

私の場合には、東京の外資系に勤めていた頃、同じ会社の仲間だからとロンドンやニューヨークに預けていた損切りオーダーが、そのように食い物にされることが続いたので、108円などのレベルに来た時に起こして貰うように改めました。

私はそれ以降、寝る時にはポジションを軽くし、ここを超えたら大動きが予想されるようなレベルで起こして貰いました。そうすると、損切りをする必要がないどころか、そこから攻めの買いを入れることも可能となりました。

個人投資家の方々は、夜中に起こして貰うことは難しいと思います。その場合のリスク管理は、眠る時にはポジションを持たないか、仮に大きくやられても、許容できるような小さなポジションにするかだと思います。

損切りが大事なことは疑いがありません。そんな大事なことを、業者に託することには、リスクがあります。そういったリスク承知の損切りオーダーを入れてでも、明日は必ず上がると思えるような相場環境は、それほど多くないと思います。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
最新記事:16/12/5「イタリア国民投票の焦点
矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。