貿易通貨、どれを使うか?

【著者】

中国人民銀行は銀行間市場で29日から人民元とユーロの直接取引を開始したと発表した。これで、米ドルを介さずにユーロ・元の取引ができるようになる。もっとも、ユーロ・元取引のスプレッドが大きく、ユーロ・ドル、ドル・元を介した方が有利だとなれば、有利な方の取引が多くなる。

一方、貿易通貨として、どれを使うかは、誰が為替リスクを取るかで決まる。

例えば、あなたがインターネットでドイツから買い物をする時、ユーロ表示ならば、販売店に方に為替リスクは生じない。一方で、あなたがいつユーロを手当てするかで、あなたには為替リスクが生じる。円表示ならば、先方が為替リスクを取り、あなたは決められた円を支払えばいい。ドル表示ならば、双方に為替リスクが生じるので、痛み分けとなる。

同じ事は、企業間における貿易で、どの通貨を使うかにも当て嵌まる。

以前の貿易で、米ドルが圧倒的に使われていたのは、米ドルの流動性が圧倒的に高く、より有利なスプレッドが得られたことと、米企業の力が相対的に強く、米企業が為替リスクから逃れてきたからだ。

現在は取引の高速化が進んだため、米ドルを介しなくても不利なレートになることはほとんどない。また、米企業自身が国際化したため、例え力関係が上でも、米ドルにこだわる必要がなくなってきた。

日米間の貿易も同じだ。日米に本社を持つ「日本の」自動車会社間の自社取引にも為替がからむ。その時、ドルを使うか、円を使うかは、力関係には依存しないかと思う。一方の為替差益は、他方の為替差損を意味することを鑑みると、財務上の理由で、使用通貨を選ぶこともあるかと思う。

貿易通貨に占める米ドルの割合が下がっていることを、ドル覇権の凋落などと言う人がいるが、覇権などでドルを持つ人がいないことを鑑みると、市場と企業の国際化の進展によるものと考えた方がいいだろう。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。