旅行収支が44年ぶりの黒字

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FXコラム|2014/06/10

4月の経常黒字は前年同月比76.1%減の1874億円と、4月単月としては比較できる1985年以降で最低だった。

経常収支を構成するのは、貿易・サービス収支と、第1次所得収支、第2次所得収支の3項目。第2次所得収支は2013年末までは移転収支と呼ばれたもので、金額が小さく無視していいかと思う。第1次所得収支は1兆8331億円の黒字だった。

貿易収支は7804億円の赤字で前年同月より722億円増えた。輸入は6.6%増の6兆7600億円。輸出は6.2%増の5兆9796億円だった。サービス収支は6597億円の赤字だった。

サービス収支を構成する「旅行収支」が177億円の黒字となった。大阪で万国博覧会が開かれた1970年7月以来44年ぶりの黒字となる。2013年4月は224億円の赤字だった。旅行収支とは、訪日外国人が国内で使う金額から、日本人が海外で支払う金額を差し引いたもの。

4月の訪日観光客は123万1500人と前年同月比33.4%増だった。タイやベトナムは単月ベースで過去最高だった。円安で日本観光が割安になったうえ、東南アジア諸国を対象にビザの要件を緩和した効果がでた形だ。観光庁は、訪日外国人の消費額が今年1~3月に前年同期比48.5%増の4298億円と過去最高になったと推計している。

一方、4月の日本人出国者数は4.4%減だった。円安で海外旅行が割高になったことが影響したと見られている。

44年ぶりの旅行黒字だが、今回の黒字はいくつかの点で意味があるかと思う。

1、今回は万博のようなイベントがなかった。
2、ブレトン・ウッズ体制の停止は1973年なので、当時のドル円は360円という安値だった。今回は過去数年と比べれば円安水準だが、まだまだ相当な円高水準で成し遂げた黒字だ。
3、当時はまだ日本人の海外旅行客は少なく、黒字化のハードルは低かった。
4、今回は、アジア諸国で海外旅行が一般的になるなど、経済的に豊かになり、また国際化が進んだことで起きた。

何度も繰り返しているが、貿易赤字とは、輸入総額が輸出総額を上回ったことを意味し、損益とは無関係だ。赤字と呼ばれていても、損しているわけではない。それに対し、所得収支やサービス収支は損益と強く結びついている。これらの黒字は、日本が儲かっている証なのだ。

サービス収支はまだ赤字だが、旅行収支が44年ぶりの黒字となった。円が現状のレベルなら、旅行収支の黒字定着、拡大の可能性は高い。円安に向かえば、所得収支の黒字が拡大し、サービス収支が黒字となる可能性が高まる。

貿易赤字は円安の長期トレンドにつながるので、天然ガスの輸入は日本の景気回復に思わぬ形で貢献していることになる。

みんなの株式に掲載されている矢口氏のコラムご覧ください
http://money.minkabu.jp/author/auth_yaguchi
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http://money.minkabu.jp/45353

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矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。