マーケット

ご存知ですか?トルコリラのリスク

【著者】

最近、高金利を謳い文句にトルコリラ/円の取り扱いの広告を目にします。トルコリラ/円はスワップ運用を行う日本人投資家に大人気の通貨ペアで弊社でも多くの顧客が取引を行っている通貨ペアとなります。
中には高金利というだけでトルコリラ/円の取引をするために口座を開設するFX初心者の方も多いようです。

確かに政策金利が7.5%と高い金利、レバレッジを2倍にすれば実質的な金利は15%近くにもなる魅力的な通貨となりますが、トルコリラ投資にはリターンに対してそれなりにリスクもあることをご存知でしょうか?
新興国通貨は主要国の通貨に比べ流動性が薄いため、値動きが荒くなる傾向があります。単に高金利というだけで手を出すと想定外の損失を被る可能性もあるため、リスクをしっかりと理解した上で取引に臨む必要があると思います。
ここで、コツコツ貯めた金利を吹き飛ばし、それ以上に損失が膨らみ兼ねないリスクをいくつか列挙してみます。

政局不安リスク

トルコでは6月7日に総選挙が行われ、与党である公正発展党(AKP)の議席数が過半数割れとなり、政局不安を理由に大きくトルコリラ売りが進む状態となりました。この結果を受けて、今後AKPは連立政権樹立を目指す動きとなりますが、連立樹立に失敗すると再選挙へと向かう可能性が出てきます。また、AKP内での勢力争いが激化し、政局が不安定な状況が続くことが予想されます。
スケジュールとしては7月から連立協議がスタートし難航すると8月にかけて再選挙のリスクが高まり、トルコリラの上値を圧迫する材料として騒がれるリスクが考えられます。

資金流出リスク・・・トルコ中銀は八方塞?

トルコでは経常赤字が続いており、そのファイナンスを証券投資など何かあると逃げ足の速い資金に依存している傾向があります。そのため、現在、米国の利上げが意識されると資金が流出しやすい状況となっており、FRBの緩和縮小が囁かれて以来、トルコリラは対ドルで安値の更新が続く状況が続いています。

また、トルコの国内経済は停滞しており、失業率も10%を超える状態となっています。トルコ中銀は金融緩和策を行いたいところですが、金融緩和を行うと、リラ安の影響で押し上げられた高いインフレ率を抑えることができない、高金利を求めて集まった資金の流出し、リラ安が加速する可能性が高く、事態の悪化を招く可能性があります。

逆に高インフレを抑えるために金融引き締めを行うと、資金流出は抑えられるものの、ただでさえ高金利の状態で悲鳴をあげている国内経済はさらに打撃を受けることになります。また、外貨準備も限られているため、介入による通貨防衛にも限界があります。

地政学リスク

トルコはイスラム国の侵略が続くシリアやイラクをはじめとする中東諸国と接しており、情勢が悪化した際には巻き込まれるリスクも少なからず存在します。また、周辺国の情勢悪化により難民が増加するようなことになると国内の治安も乱れやすくなりトルコ経済に悪影響を及ぼす可能性があります。

ドル円が崩れてしまうと・・・

tryjpy1

日本人のFX初心者の方がトルコリラというとトルコリラ/円を思い浮かべる人が多いと思われますが、トルコリラ円で見ると4354くらいのレンジでの上下動を繰り返す推移となり、下落が続いた後、底堅さを見せ始めているように見えます。
しかし、対ドルで見るとどうでしょう。

2015.06.29UStryjpy

上記はドル/トルコリラのチャートになりますが、綺麗な上昇トレンドが続いています。ということは、トルコリラが対ドルで売られ続けているということになります。

ご存知の方も多いと思いますが、トルコリラ/円のレートはドル/円のレートをドル/トルコリラのレートで割って計算します。現状では、トルコリラは対ドルで大きく売られている状態ですが、ドル円が日銀の強力な緩和と利上げに向かうFRBとの金融政策のスタンスの差などを背景に底堅い推移となっているため、トルコリラ/円では大崩れには至っていないという状態となっています。

現在のようなドルが中心の相場であれば、ドルの弱い状況となり、ドル円が下落するような状況となるときには、ドル/トルコリラでドル売り、トルコリラ買いも発生し、ある程度はトルコリラ/円が支えられるという状況となり、方向感は出にくい状態になるかもしれません。

そのため、ドル中心の動きであれば一定のレンジ推移となる可能性が高いですが、円やトルコリラが中心に動くような事象が発生した際には注意が必要です。たとえば、何らかの市場リスクが高まり、リスク回避の円買いが強まるような状況や、日銀が現在の強力な緩和からの出口に向かうような事態になった場合です。

トルコリラ円のチャートを見ると黒田バズーカ第2弾で大きく上昇し、その後、上昇分以上の下落となっており、日銀が強引に作り出した円安により、支えられている状況となっています。まだ先の話ですが、将来的に日銀の金融緩和が出口に向かい、ドル円が下落するような局面がきたら・・・。

これらのリスクは必ず起こるというものではなく、起こる可能性があり、トルコリラに大きな打撃を与えかねないものや、そのリスクが意識され、トルコリラの上値を抑えているものとなります。

悪いことばかり書きましたが、リスクだけではなくトルコには希望もあります。今回の選挙でエルドアン大統領の独裁にブレーキがかかったことは、中長期的に見ると、トルコ経済にプラスに捉えることもでき、米国の金融政策も落ち着き、世界経済が順調に回復に向かう局面でトルコ経済が元気を取り戻すというシナリオも十分に考えられます。

トルコ経済が順調に回復に向かう段階では、トルコリラも反発に転じ、スワップ運用も為替差益を併せ成功に終わる可能性も高まります。
筆者が言いたいのは、リターンが大きい分、リスクもそれなりにあるということです。

リスクを理解した上で、余裕資金でゆとりを持って取引することをお勧めします。

OANDA Japan   オアンダ ジャパン<本記事ご協力>
OANDA Japan株式会社
チーフストラテジスト 佐藤甲様
佐藤甲|OANDAJapan チーフストラテジスト

佐藤 甲

OANDAJapan㈱チーフストラテジスト。 NY時間を中心にディーリング業務を担当し、2012年より現職。ファンダメンタル、テクニカル、時にはシックスセンスを駆使し相場を斬る。夢と希望と情熱あふれる熱血相場師!風貌はラテン系だが、異性には奥手。日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト