Q&A:ウクライナ問題を心配しています

:私は「ギリシャ経済」問題は、あまり大きな問題にならず、債務延長程度で解決するのではないかと考えていますが、私はそれよりも「ウクライナ」問題を心配しています。
この問題をどのように、お考えでしょうか。解決は、アメリカの対応いかんだと思いますが、親ロシア側に、ウクライナ残留を前提に、一部自治権を認めることしかないように思えますが、先生のご意見をお聞かせください。

おっしゃる通りウクライナ問題は、アメリカというよりオバマ政権の腹積もり1つだと思います。ドイツ、フランスなど欧州は当初、対ロシア制裁に反対でした。結局はオバマ政権に従いましたが、これ以上の制裁は欧州にとっても負担が大きいと見ているようです。

またアメリカ国内でも、エクソンモービルや電力会社は対ロシア制裁をしばらく無視していました。対ロシア制裁が米経済に与える負の影響は、欧州経済への負の影響の5分の1程度との試算がありますが、それでもプラス面よりは大きいと言われています。

アメリカの報道では、ウクライナ問題はロシアの領土的野心と言われていますが、クリミアを除いては、ロシアのメリットが大きいとは思えません。ウクライナが親ロシアで固まってくれれば話は別ですが、現状の親NATOの状態で組み入れても、大きな国内問題を抱えるだけだからです。

クリミアは要地で、もともとロシアなので、プーチン大統領が手放す可能性はほぼゼロかと思います。ロシアにとっての理想は、ウクライナが親ロシアでまとまって、対NATOの壁となってくれることかと思います。

親ロシア派の大半はロシア系住民で、ウクライナは経済的に自立していないため、ウクライナに留まるよりはロシアに帰属したいと考えるのも頷けます。一方、ウクライナ系住民の反ロシア感情は根強いようで、親NATOとなって経済援助を受けようとしています。ロシアは両者が対立しているため、親ロシア派を支援するしかないといったところかと思います。

解決策としてはおっしゃる通り、「親ロシア側に、ウクライナ残留を前提に、一部自治権を認めることしかない」と思います。これは、おそらくロシアにとってベストの解決策かと思います。そうなれば、ロシアはウクライナへの経済援助を復活させるかと思います。欧州にとっても、これ以上のウクライナへの経済的負担なしに、ロシアとの経済関係を回復できるので、ベストに近いでしょう。失うものはこれまで続いてきたNATOの東への拡大が、ここまでで終了することです。

問題はウクライナの人々がそれで納得するかということと、オバマ政権の面目が丸潰れとなることです。対ロシア制裁は、欧州の反対、国内のエネルギー産業の反対を押し切ってなされたものです。おそらく弱腰外交の汚名を晴らしたかったのかも知れません。あるいはNATOの東への拡大をロシアの国境線にまで拡げたかったのかもしれません。

しかし、オバマ外交は対ロシア制裁で致命的なミスを犯しています。ロシアはこれまで西側と付き合うために、それなりの譲歩をしてきました。しかし、制裁以降は、イランや中国、北朝鮮、一部の南米諸国の関係などを、アメリカ外交の効果を失わせる形で拡大しています。結果的に世界的なアメリカの影響力が更に低下しました。

対ロシア制裁は同朋国の犠牲のもとにロシアをいじめているだけで、効果にとぼしく、かえってアメリカの影響力を下げてしまっています。オバマ外交の得点はキューバくらいではないですか?

私は米国内のエネルギー産業を中心に、オバマ政権の次を見越した動きが出始めるかと思います。希望的観測ですが、ウクライナ問題は最長2、3年で政治的解決もあるかと思います。

一方、ギリシャ問題は、ユーロが抱える構造的な欠陥「参加諸国に独自の通貨・金融政策がなく、財政政策も自由にできない」ことが根本的な原因だと見ています。当初は、ユーロ圏諸国の財政は遠くない将来に統一という了解があったようです。そうなれば、ギリシャ問題は緊縮財政ではなく、域内の財政政策・公共投資で解決できました。しかし、財政の統一はドイツが頑強に反対しているため、その可能性が低くなってしまいました。

ギリシャ問題は、ユーロが抱える構造的な欠陥が一番弱いキプロスやギリシャに症状としてでているだけで、スペイン、イタリア、フランスさえもが発症の兆候を見せています。こちらは、またの機会に。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
最新記事:16/12/5「イタリア国民投票の焦点
矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。