増税か、経済成長による税収増か?

【著者】

米国の2014年度(13年10月-14年9月)の財政赤字は4834億ドルと、前年度の6802億ドルから縮小、2008年以来の低水準となった。2009年度には1兆4000億ドルと、過去最高を記録していた。14年度の歳入は3兆200億ドルと、前年度の2兆7700億ドルから8.9%増。歳出は3兆5000億ドルと、前年度の3兆4500億ドルから1.4%増だった。

United States fiscal balance

対GDP比では2013年度の4.1%から低下、2.8%と2007年以来の低水準だった。過去40年間の平均をも下回った。2009年度は9.8%だった。

参照:Why deficits have fallen so dramatically (英字サイトです)
http://money.cnn.com/2014/10/15/news/economy/2014-budget-deficit-treasury/index.html?iid=HP_LN

米財務省は、財政赤字急減の主要因として歳入増を指摘、経済成長による法人税収増、雇用拡大による所得税収増を挙げた。雇用拡大はまた失業者減少による社会保障費削減、歳出減にも繋がっている。

量的緩和は2008年末に始まった。2008年10月から2009年9月までの2009度の財政赤字が過去最高の1兆4000億ドル(GDP比9.8%)だった。それから量的緩和終了の2014年度までの5年間に、財政赤字は4834億ドル(GDP比2.8%)にまで縮小した。2009年10月には10.2%だった失業率が、2014年9月には5.9%にまで低下した。その間、S&P500株指数は700ドル割れから2000ドル超にまで上昇した。

同じ頃、欧州諸国の財政再建策は専ら増税によるものだったが、未だに目に見えた成果が見られない。それどころか、景気は低迷し、失業率は高止まりしたままだ。これでは歳入増も、歳出削減も多くは望めない。

増税と、経済成長による税収増と、どちらが財政赤字削減に効果的か? 少なくとも金融危機後の欧米の対応策では結果が出ている。しかも、増税は財政再建のために多くの犠牲を強いるが、経済成長、雇用拡大は多くのものを生み出すのだ。ここで、格差縮小に努めれば、更に好結果が期待でき、治安維持や生きる希望にもつながると言える。

景気減速が見られるのに、更なる増税を考えている日本の政策担当者には、欧米の先行例を十分に検討して貰いたい。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。