米利上げ時期が後ずれか?

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4月3日発表の、米3月の雇用者数の伸びが期待外れに低調だったことで、米連銀の利上げ時期が後ずれするのではとの観測が俄かに高まってきた。早ければ6月、遅くても12月、大勢は9月としていたのが、約3カ月後ずれし、年内はないとの見方も台頭してきた。

一方で、4月7日発表のJOLTS(米労働省求人労働異動調査)では、2月の求人件数が前月比16万8000件増加の513万3000件と、2001年1月以来の高水準となった。

求人率は3.5%と、1月の3.4%から上昇。離職率は1.9%と、2.0%から低下。解雇率も1.1%と、1.2%から低下した。求人件数に対する求職者数の割合は1.70と、前月の1.81から大幅低下、2007年11月以降で最低となった。

昨日のものは2月の数値、先週のは3月の数値で、3月に急速に悪化したという捉え方もできる。一方で、3月は寒波による一時的な低迷とも言われており、大筋の雇用環境は劇的に改善していると考えていいかと思う。

では、これまで通り早ければ6月、遅くても12月、大勢は9月と見ていていいのかと言えば、そうとも言えない。何故なら、利上げ時期の後ずれは今に始まったことではないからだ。

丁度3年前、2012年の今頃には、金融政策を司る米連邦準備会の17委員中14人が、2012年末の政策金利を現状の0.00-0.25%と予測していた。つまり、3人は2012年中の利上げを予測していた。17委員中6人が、2013年中の利上げを予測。17委員中11人が、2014年中の利上げを予測した。以降は、ほぼ全員が4%以上の政策金利を予測していた。

ターゲット

では、何故こうも後ずれし続けているのだろうか?

日銀の量的緩和の目的はインフレ率を2%に引き上げること1つだが、米連銀はインフレ率2%前後での安定に加え、雇用市場の改善を挙げている。

米連銀2つの目標のうち、雇用市場の改善は、失業保険継続受給者数がピークだった2009年3月の約645万人から、2015年3月の約233万人に減少し、また先の2月のJOLTSの数値に見られるように、劇的に改善している。これを見る限り、いつ利上げしてもおかしくはない。

一方、2月の米消費者物価指数は前月比+0.2%、前年比フラット。食品とエネルギーを除くコア指数は前月比+0.2%、前年比+1.7%。実質個人消費を見るPCEのコア・デフレーターは前月比+0.1%、前年比+1.4%と、利上げを急ぐ環境にはない。

この2つの目標に関して、利上げ時期を先延ばしすることのリスク・リターンは、雇用市場の更なる改善だ。雇用市場の改善は量的には目覚ましいものがあるものの、給与増といった質的にはまだまだだ。その意味では、米連銀の利上げ時期が来年となっても何の問題もないと言える。

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矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。