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米銀が米国債を大量に買い戻し

【著者】

米商業銀行の米国債保有が過去最高の2兆1500億ドルとなった。最大の米国債保有国である中国の保有分が約1兆2500億ドルなので、その2倍弱となる。保有の理由は、「恐らく年内の利上げはない」と見越しているためとされる。

日本国債でも最大の保有者は銀行で、ここ何年かで急減しているが、それでもまだ3割強を保有している。10年以上も前から日本国債の暴落が危惧されているが、これまで暴落しないできたのは銀行などが保有し続けてきたからだ。

国債などの所有者別内訳

10年債でも0.30%内外の利回りでしかない金融商品を保有していられるのは、原則的にはそれ以下の金利で資金調達ができるところだけだ。原則的と断るのは、金融機関やファンドはリスク回避と称して、コストを払ってでも保有することがあるからだ。そのコストは多くの場合、消費者、加入者などに転嫁される。

もっとも、銀行の本業は貸出なので、そこから利益が上がれば低利回りの国債を大量に保有する理由が乏しくなる。銀行の総預金残高は2015年9月末時点で654兆円、貸出金は462兆円だ。一方の国債保有は6月末時点で312兆円となっている。預貸金の差額を国債運用で補っている形となるが、単純に差額をみると120兆円は預金以外の借入れなどで資金調達していることになる。

全国銀行預金・貸出金

政策金利の上昇、短期金利の上昇は、銀行の資金調達コストを上昇させる。もっとも、その際には運用コストも上昇し、預貸金利は利ザヤはむしろ拡大する。銀行の収益向上が見込まれることになる。

問題は、低利回りの運用商品を長く持てなくなることだ。利上げが近付くと、低利回りの国債が売られることになる。一方、米国の例にあるように、利上げが遠退くと、国債のいったんの買い戻しが起きることとなる。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。