FXコラム

米株は割高か、割安か?

【著者】

米国の株価が最高値圏にあるなかで、そのバリュエーションを巡って、面白い意見が出始めている。

バリュエーションとは、株価の価値、割高、割安を見るもので、通常は過去と現時点の企業収益を比較する。あるいは配当利回りと、国債利回りを比較する。

ところが、バーナンキ前米連銀議長などは、一時期の値上がり率を取り上げて、それが継続していたなら、現在の株価は割安だと述べた。

「米連銀の行動は、株価の永続的な上昇につながったというよりは、株価自身の持つトレンドに戻したと考えてよさそうだ。もし、S&P500株指数が2007年第4四半期と同じペースで上昇し続けていたならば、2015年第1四半期には平均すると2123ドルに達していた。実際には2063ドルで、若干下回っていた。」

参照:Monetary policy and inequality(バーナンキ元FRB議長のブログ)
http://www.brookings.edu/blogs/ben-bernanke/posts/2015/06/01-monetary-policy-and-inequality

1950年以降のチャートを見て貰えば分かるが、同氏の見方は少し無理があると思う。確かに、2002年から2007年にかけてのトレンドの延長線は、現在の株価よりも高いところにある。あるいは、1990年代半ばから2000年にかけてのトレンドを延長するなら、今頃は6000ドルや7000ドルになっていてもおかしくはない。

参照チャート:S&P500株指数(1950年~2015年)
S&P500

しかし、そんな事が言えるなら、過去の良い時期を取り上げて、あの頃のままならば、今頃私は、、、「世が世ならば、、、」と、誰でもが、今の自分は「割安」だと宣言することができる。

過去のトレンドを参考にするならば、70年代、80年代と結んだラインで、丁度リーマンショック後の株価がサポートされているので、これを長期トレンドと呼ぶことができる。その延長線ならば、今頃、やっと1000ドルを超えた辺りだ。

では、割高だろうか?

米株価におけるバーナンキ氏の功績は疑いがない。同氏が議長であった時代に、米連銀はその資産を5倍に膨らませたのだ。私はこの未曾有の量的緩和が、米株高の主要因だと見ている。株価のトレンド云々よりも、米金融政策のトレンドを変えた下のチャートの方が劇的だ。仮に通貨供給量がそのまま株価に反映するなら、株価が5倍でもおかしくはないのだ。

参照チャート:米連銀の総資産(2007年8月~2014年10月)
FED資産

面白い見方は他にもある。

1981年にレーガン元米大統領の行政予算管理局政権移行作業チームの一員だったエコノミスト、レイノルズ氏は「株式市場が割高なら、債券価格も高過ぎる」と述べている。PERの逆バージョン、株価に対して利益がどれだけかを見れば、2015年の米株は割高でも割安でもない。一方、米国債の利回りは歴史的な低水準、つまり、歴史的な割高水準にあると言う。

S&P500と10年債

参照:A 45-year chart shows stocks not overvalued: Economist
http://www.cnbc.com/id/102722850 (英字サイト)

国債利回りを企業収益と比較するよりも、配当利回りと比較する方が、性質が似通ったものを比較することになるので、私などはより適当だと考える。もっとも、国債利回りは歴史的な低水準なので、何と比較しても割高だ。

相場はパラダイムが変わったと言う人が増えだすと要注意だ。私は債券から株式への資金の大移動が、これから本格化すると見ているので、米株にもまだ強気だ。とはいえ、米市場は大量の資金供給時代が終わり、既存の資金を投資物件の中で回す段階に移っているので、いままでよりは慎重になっている。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。