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欧米主要国債市場のボラティリティが急上昇

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欧米主要国の国債利回りが急上昇している。ドイツ国債などは2015年4月に1カ月から7年までの利回りがマイナスとなり、長期金利の指標である10年国債の利回りもほぼゼロまで低下していたが、この1カ月半で0.90%近くまで上昇した。

先週には、欧州中銀ドラギ総裁が記者会見で、「ボラティリティの高い局面に市場は順応する必要がある」と発言、主要国の国債利回りは一段と上昇した。

ロイター

これまで、ほぼ一直線に低下してきた利回りが、なぜ反転し始めたのか? 様々な解説が可能だと思うが、米国債、米社債などと共に、ドイツ国債もディーラーとして実際に取引してきた経験をもとに解説してみよう。

まず、マイナス利回りというものが、持続不可能な超高値であったことが理由の1つだ。

例えば、利率0.5%の7年債を額面の100%の価値で買うと、分かりやすく日本円で100円で買うと、毎年0.5%である0.5円の利息が払われ、7年目に利息と合わせた元金の100.5円が償還される。

これがマイナス利回りになるということは、100円以上の価格で買うことを意味する。105円で買ったとすれば、やはり、毎年0.5%である0.5円の利息が払われ、7年目に利息と合わせた元金の100.5円が償還される。いくらで買っても利息と償還元金は同じなので、債券は確定利付き商品と呼ばれる。

金融商品である債券には付加価値はなく、その本源的な魅力は利率や利回りだといえる。高く買うと利回りが減り、それ以上に高く買うとマイナス利回りとなる。こうなると、確実に損がでる商品となり、投資物件としての価値はない(マイナスの価値)。それでも買ったのは、規制や諸々の事情でしかない。あるいは、それより高値で売り抜けるという芸当に自信があるかだ。

ここで、利回りが低下している間は、買った理由が規制や諸々の事情であっても、値上がり益に預かれるので問題にはならない。しかし、いったん反転したとなると、そのコストと事情の深さとの見合いとなってくる。値上がり期待だった人たちは、損切りを強いられる。急反発は自然な動きなのだ。

もう1つの理由は、ユーロ圏のインフレ率が上向き始めたことだ。例えデフレでも、確実に損が出るマイナス利回りまで買うことを正当化できるものではないが、値上がり期待という夢を見ることはできる。それが剥げ落ちた。

では、ドイツ国債は暴落するのだろうか?

実は、まだ4年未満のドイツ国債はマイナス利回りのままだ。これらは売られて、プラスの利回りになってくると思う。一方で10年国債などは、このまま1%を超えて、どんどん売られるかと言うと、それも疑問だ。なぜなら、欧州中銀は国債買い入れの量的緩和を行っているからだ。

また、銀行は短期金利で借入れて、長期金利で運用するが、この長短スプレッドが広がることは、利ザヤの拡大を意味する。つまり、欧州中銀の金融緩和が継続している間は、売られた押し目には買い手が現れるので、大崩れは考えにくい。

こういった状況を鑑みれば、「ボラティリティの高い局面に市場は順応する必要がある」というのは、的を射た忠告だ。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。