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ギリシャは敗者なのか?

【著者】

ユーロ圏に勝利はない

EUは、ギリシャへの金融支援を今日6月30日をもって一旦打ち切ります。これによってギリシャは今日期限のIMFへの約15億ユーロの返済ができなくなる見通しとなったほか、ECBからのELA(緊急流動性支援)も増額もなくなったことで、銀行休業、ATMからの引き出し制限(一日60ユーロ)などの資本規制措置を取らざるを得ない事態となりました。一連の事態を見ると、ギリシャのチプラス政権がこれまで行ってきた強硬な外交姿勢が支援国側に残っていた僅かな同情(親近感?)をも打ち砕き、自らを窮地に陥らせているように見えます。

来週末5日にはギリシャで国民投票が実施されます。支援国側が提示している緊縮財政措置などを受け入れるか、拒否するかを問うもので、ここまで事態が悪化しているからには、ギリシャ国民は受け入れを選ぶだろう、との見方が大勢を占めています。

本当にそうなのでしょうか。

ここで問題なのは、もしギリシャが支援国側の緊縮措置を拒否したり、IMFへの支払いをせず、ECBが持っている国債をデフォルトしたりしても、かならずしもユーロ圏を離脱する必用がない、という事です。EUには加盟国をユーロ圏から追い出す規定がないことから、ギリシャはそういった支払を一切しなくてもユーロ圏に居座る事ができるのです。ギリシャはとうの昔に実質的に財政破たんして、借金を返す為にあらたな借金をする、というサイクルになっています。たしかに今日支援が打ち切られることで、今後新たな資金を国外から調達することができなくなります。しかし、逆に言えばIMFへの返済をやめ、ECBがほとんどを持っているギリシャ債をデフォルトすれば、国外への支払いもなくなります。そう考えれば、厳しい財政緊縮策を受け入れることのメリットはあまりないかもしれません。

支援国側の提案を拒否することの一番のデメリットは、ギリシャの銀行がECBからELA(緊急流動性支援)を受け取れなくなることですが、その事によってギリシャの銀行は、今のような部分的な資本規制ではなく、一切の支払いを停止するような状況に陥ると考えられます。しかしECBは、ユーロ圏内であるギリシャで銀行の破たんが続くことを放置することはできないのではないでしょうか。それは単にECBが所有するギリシャ債の問題だけではないのです。

現在の事態は、単にギリシャという一国の財政破たんの問題を超えて、財政統合のない国の間での通貨統合というEU、ユーロ圏の大きな社会的、歴史的チャレンジに対する試練です。ギリシャの問題はギリシャの問題ではなく、ユーロ圏、EU全体の問題なのです。そう考えれば、ギリシャが敗者になるということは、EUの勝利を意味することではないのがわかります。

<本記事ご協力>

チーフストラテジスト 高野やすのり様
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高野やすのり|FXプライムbyGMO

高野 やすのり

慶應義塾大学商学部卒 チェース・マンハッタン、スイス・ユニオン、ファースト・シカゴなどでインターバンクディーラー業務に従事。 株式会社FXプライムbyGMO チーフストラテジストとして、長年培ってきた経験を生かし、インターネット上のコンテンツや、ラジオ、セミナーを通じて正しいFXの知識や、FXの魅力を広める為の活動を行う。 NPO法人日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト