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なぜ、いま金投資か?

【著者】

金価格はリーマンショック後にいったん底を打ち、2011年後半には1900ドル近くまで上げた。その後2015年末にかけて1000ドル近くにまで下落したが、そこからは下値を切り上げ、1800ドルからの長期下降トレンドを上抜け、安値から3割ほど上げている。値動きを見ると、1000ドル近辺ではいったんの底値感がでており、まだ上げ相場が続きそうだ。

NY金5年チャート(出所:NY金先物価格-金相場リアルタイムチャート速報推移

金が買われるのは、リーマンショックなどの経済危機の時や、地政学的リスクが高まった時などで、いわゆる安全資産として買われる。しかし、このところの買い手には、債券投資家が加わっているようだ。

これまで債券投資家は、基本的に金投資に魅力を感じないできた。債券投資は、いわば貸付けと同等で、その主要な目的は金利収入だからだ。それが世界的にマイナス利回りの債券が増えるにつれて、まともな金利収入が望めなくなってきた。

2015年度のGPIFの運用では、国内株、外国株、外国債券の損失を、国内債券の利益だけで穴埋めした(埋めきれずに損失が出た)。一方で、2015年の11月9日からは2年国債が(以降はプラス利回りがないという意味で)継続的にマイナス利回りとなり、2016年2月24日からは10年国債までが継続的にマイナス利回りとなった。それ以降の国内債券からの利益は専らキャピタルゲインだけとなっている。

同時期に金価格が底打ちしたのは偶然だろうが、ここにきて、金投資の相対的魅力が高まってきた。

なぜなら、マイナス利回りの国債投資は、金利面での逆ザヤをキャピタルゲインで補わなければならない。この時どんなに値上がりしても、償還まで持ち切れば100に戻ってしまうので、買った時から、いつ売るかを考えねばならない投資(正確には投機)なのだ。これは、どこまで上げるか分からない株式投資などとは比較にならない厳しい投資だ。一方で、現状で利回りを求めると、大きな信用リスクや為替リスクを取る必要がでてくる。

金投資は金利がつかないのが難点だった。それでも信用リスクさえ取れば、つなぎ売りなどの貸出しによる金利収入も得られる。高く買っても、債券のように必ず100にまで値下がりするというわけでもない。また株式のように、最悪の場合には紙切れになるリスクもない。今後は経済危機や地政学的リスクが減少するとの見通しがあるわけでもない。

カネ余り運用難に加えて、これらの点が、債券投資家が金投資に魅力を感じるようになってきた理由だと思われる。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。