短期金融市場を破壊した黒田日銀

「野村アセットマネジメントは8月31日、24年の歴史を持つ投資信託の一種、MMFの運用を終えた。短期債券などで運用するMMFは安全性の高い金融商品として親しまれてきたが、日銀のマイナス金利政策による金利水準の大幅な低下で運用が困難になった。約3400億円の資金は投資家に返還する。

大和証券投資信託委託も10月末までに運用を取りやめ、MMFは姿を消す。低リスクのMMFは投資の入り口的な商品として1992年に誕生。個人に加え、企業の余資運用の資金も流入し、ピーク時の資産額は業界全体で20兆円を超えた。」

そもそも、金融緩和とは、何だろう? 利下げや、資金供給を行う目的とは、何だろう?

金融とは、資金を融通し合うこと。緩和政策とは、資金を余ったところから、足りないところに誘導することだ。余資を持つ者は運用益を得、資金を必要とするものは、資金を活用する。資金が流れることにより、利息を得た資金提供者の購買力が向上する一方で、活用者による設備投資や消費を通じて、成長率が高まったり、モノやサービスの値段が上がったりする。

ここにMMFのように、貸し倒れという信用リスクがほとんどなく、すぐにでも資金を引き上げられる環境を提供していれば、余資を預けやすくなる。市場が大きければ借り手も借りやすい。もっとも、貸し借りなので、それなりの金利は授受されるというのが、短期金融市場だった。

日欧のマイナス金利政策で、どちらでも金庫が売れている。余資を銀行、金融市場に出しても金利が得られず、メリットよりもコストやリスクの方が大きくなったので、余資を持つ者が資金を抱え込んでいる。当局が、資金を融通し合う市場を否定しているからだ。欧州の最も歴史のある銀行の多くが、危なくなってきているのは、金融政策の故なのだ。

資金供給は基本的には効くが、カネ余りで使い道のない金融市場に供給するのでは、効果が薄い。資金を最も必要としているのは、庶民だ。あるいは、消費増税ありきで、悪影響の軽減が目的ならば、それなりの効果ぐらいは出ているかと思う。

歴史を学ぶと、滅びる国には、悪い時に、悪い人が、悪い地位につく。
ユーロが機能していないEUと、20年ほど金融政策が機能していない日本と、どちらが歴史の例に倣うのだろう? とは、言い過ぎか?

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。