為替操作国の経常黒字?

ドイツのIFO経済研究所は、ドイツ2016年の経常黒字が2780億ユーロ(3100億ドル)となり過去最高を更新するとの試算を公表した。中国を抜いて再び世界一の規模になるという。「ドイツの経常黒字は貿易黒字に起因するもの」。2016年上半期だけで、ドイツの貿易黒字は1590億ドルに達した。

IFOによると、ドイツの経常黒字はGDP比約8.9%に相当。ECは加盟国に黒字額をGDP比6%以内に抑えるよう求めている。

また、中国2016年の経常黒字は、輸出の減少を受けて約700億ドル縮小し2600億ドル程度、日本は約1700億ドルで3位と予想した。

為替の変動相場制が持つ優れた機能は、経済の成長率の差異の調整機能だ。例えば、強い経済により貿易黒字などが拡大すると、実需の通貨買いにより、通貨高となる。通貨高はコストや販売価格を上昇させるので、競争力が減退する。それが続けば、いつまでも強い経済ではいられない。

基本的に、通貨安は国際競争力を高めるので、ほとんどの国は通貨安を望んでいる。そこで、「通貨戦争」と呼ばれるものは、各国による「通貨安誘導競争」を指している。もっとも、通貨安はインフレを誘発するので、インフレ率が高い国は、通貨安を望まない。また、景気が過熱気味の国も、通貨安による景気浮揚効果を望まない。

経常黒字国1~3位の過去2年間の為替レートと見ると、非常に興味深いことが分かる。
1位のドイツが14.7%のユーロ安、2位の中国が8.8%の元安となっているのだ。3位の日本だけが3.7%の円高となっている。

ドイツは域内に弱い経済を抱えることで、(図らずも?)通貨安を謳歌できている。
また、中国は為替操作をしないことが元安放置という理解を浸透させ、ここも通貨安を謳歌している。もっとも、固定相場が続いていたので、現状のレートが果たして元高なのか、元安なのかははっきりしない。政府による直接投資や、民間による不動産投資、爆買いなどを鑑みれば、まだ元は強いのかも知れない。両国ともに、景気やインフレ率から見れば、通貨安の恩恵は大きい。

一方の日本だけが、為替の変動相場制が持つ優れた機能をそのまま反映させていて、(無作為に)景気減速効果、デフレ効果を受け入れている。それでも黒字が減らないのは、増税などにより購買力が落ちているため、輸出の減少を上回る、輸入の減少が見られるためかも知れない。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。