マイナス金利政策で地銀の半数以上が赤字に

(以下、日経新聞の記事から抜粋)

金融庁が全国106の地方銀行の貸出業務に伴う収益見通しを試算したところ、2025年3月期に赤字に転じる地銀が半数超にのぼることが分かった。人口減少に低金利が重なることで利ざやの縮小が加速。経費をまかないきれない地銀が相次ぐと予測した。預金を集めて貸し倒れリスクの低い取引先に貸し出す「薄利多売」の収益モデルからの転換を促す。

一般的に預金をどれだけ貸し出しに回しているかを示す預貸率(現在は約70%)が下がると利ざやの縮小傾向は強まる。預金残高が高止まりするなか、貸し出し需要が減るため二重に利ざや縮小の波を受ける。

日銀のマイナス金利政策の影響もあり、レポートでは「足元、貸し出しと預金の金利差は限界まで縮小」していると指摘した。

金融庁は「今後、多くの地銀で従来のように貸出業務から収益を得ることが困難となるおそれがある」と分析する。地銀は利ざや縮小を貸し出し増で補おうとしてきたが、こうしたビジネスモデルが成り立たなくなることが浮き彫りになった。

一方、地元の中小企業向け貸し出しが多い地銀などは利ざやの縮小幅が緩やかになるとの分析結果も併せて示している。貸し倒れリスクが低い代わりに利ざやも薄い大企業や自治体向けの融資競争に力を入れるのではなく、地域密着で中小零細企業にも積極的に貸し出すことが収益力の強化につながるとみている。

参照:地銀の半数超、25年3月期に本業赤字 金融庁が試算

ここでのポイントは、

1、「預金を集めて貸し倒れリスクの低い取引先に貸し出す」という、金融本来の機能が否定されていることだ。ここでは「薄利多売」としているが、これは低金利で多くの企業に貸し出すことを意味し、緩和政策を採る当局が否定すべきことではない。

2、「足元、貸し出しと預金の金利差は限界まで縮小」が意味するところは、地銀は身を削ってでも、金融本来の機能を続けており、それが赤字につながることを示している。

3、「地元の中小企業向け貸し出しが多い地銀などは利ざやの縮小幅が緩やかになる」は、地元の中小企業ほど高い金利を支払っているという意味だ。また、より高い金利収入を得なければ銀行が生き残れないことを表している。

日本の全法人の7割が税金を支払っていない赤字企業だ。残りの3割は比較的優良企業で、低利での借入ができる。地銀は自らが赤字となり欠損法人となるか、欠損法人に貸出し、最悪の場合には自らが破綻するリスクを取るかの選択を迫られている。あるいは、投機的になるかだ。

これは超緩和的政策、マイナス金利政策によるシステマティックなリスクなので、再編による規模の拡大で乗り切れないことは、世界最大級の銀行、ドイツ銀行が同様の苦境にいることでも分かる。

上記の試算では、おそらくマイナス金利の深掘りという、追加緩和の影響はまだ織り込んでいないと思われる。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。