FXコラム

☆トランプ米次期大統領と、安倍首相に期待する

【著者】

チェンジを求めていた米国民

私は、問題児トランプ氏の米大統領選での勝利を、米国民の「チェンジ」に対する強い渇望の表れだと見ている。8年前にオバマ現大統領は「チェンジ」を訴えて当選したが、「様変わり」してしまったのはオバマ大統領の方だった。

日本でも「様変わり」で印象に残っている政治家がいる。青島幸男元参議院議員、元都知事だ。都知事になってから「様変わり」し、その後の、舛添要一前知事までの「お飾り知事」につながったとされている。今回、それを「チェンジ」したのは、小池百合子現知事だ。東京都民も「チェンジ」を欲していた。

一方、クリントン氏は、第一次オバマ政権で要職についていたことで、米国民の「チェンジの渇望」に応えられる期待度は低かった。

ブレグジットは、欧州連合という既成の枠組みが機能していないために、英国民は離脱に活路を求めた。決定後、英国経済はボロボロになると言われていたが、そうはなっていない。離脱後には本当にボロボロになるとまだ言われているが、私はその落ち込みは一時的だと見ている。それより、欧州連合の方が心配だ。

政治家としてのトランプ氏は未知数だ。米国は自国の既成の枠組みが機能していないと感じた人たちが、リスクを取ってでも活路を求めた。

とはいえ、同氏は組織を利用し、組織を振り回し、組織を従わせて勝利した。
私はトランプ氏の政治家としての能力は未知数だと書いたが、勝利につなげた行動は、極めて政治的だった。ちなみに、今回もオハイオ州での勝者が大統領に決まった。

参照:米大統領選に固唾を呑む市場。ヒラリーでもトランプでも株高・ドル高は続く
=矢口新

現状が機能していないと見ると、耐えるのではなく活路を求める。私はアングロサクソンのパイオニア精神に驚嘆している。ネガティブ・サプライズは1日も持たなかった。

ドルと株の押し目買いスタンスは変わらない。

Q&A:日本株はロングスタンスの方が優位?

トランプ大統領は、本当に予想外なのか?

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朝の市場情報の番組で、ニューヨーク証券取引所のフロアーの人間が、「トランプ勝利は誰も予想していなかった」と述べた。日本の識者でも、同様のコメントをする人々が多い。

一方で、共和党は両院での過半数を維持した。上院は共和党51議席(2減)、民主党48議席(2増)、下院は共和党239議席(6減)、民主党192議席(6増)となった。
そこに大統領が共和党となったことで、一応、ねじれ現象はなくなった。一応と断るのは、トランプ氏は共和党の主流派ではないからだ。異端児だ。

それにしても、おかしな話だ。国民の約半数が取った行動を予想できないことを、自分たちの目が曇っていたと反省するのではなく、「社会分断、危うい大衆迎合」などと、変化を求めた人たちが、まるで無知かのようなコメントをする。
他の見方、考え方を認めようとしないのは、自分たちの方ではないか?

市場は売り手と買い手とが常に1対1で取引が成立する。残る半数の人の考え方や行動が見えなければ、生き残ることなどできない。本当に、「トランプ勝利は誰も予想していなかった」のだとすれば、危ないのは米国民ではなく、市場関係者や、いわゆる、エリート層だ。メディアのミスリードも甚だしい。

一般の米国人は、そういったエスタブリッシュメントの在り方や、メディアの報道姿勢にも「チェンジ」を求めたのだ。

私は、「トランプ勝利は誰も予想していなかった」人たちに、同氏の勝利を重く、謙虚に受け止めて頂きたいと願っている。

日本はピンチなのか?

トランプ氏の外交姿勢は、基本的には「自分のことは、自分でやれ」ということだ。内向きだとの解釈もあるが、外向きに世界中に干渉し、世界の嫌われ者となったことへの反省だ。また、国内に多くの問題を抱え、他国どころではなくなったことを直視した。

日本にも、米軍に守って貰いたいならば対価を要求すると言っている。真の意味で「独立」したいならば、主従関係ではなく、契約により「米軍を雇え」と言っている。
それが、敵対関係を意味するのでないことは、「核保有」を認めると言っていることでも明らかだ。誰が敵に「核武装」しろと言うだろうか?

TPPも同様だ。米国の利益を最優先することは、米国人の政治家として当然のことだ。これまでの米政治家も皆そうしてきた。違うところは、これまでの米政治家は「あなたのため」だと言いながら、自国のために他国を振り回してきたところだ。

ようやく、初めて、日本を一国として、独立国として扱うという人が、米国の大統領になる。「様変わり」しないで欲しい。それをピンチだと捉える人々は、負け犬根性が染みついた人、1対1の関係、交渉に耐えられない人だ。

私は、安倍晋三首相に期待する。
やっと、日本を一人前に扱ってくれる人が、米国側の交渉相手となる。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。