Q&A:経済合理性のないトレードはしない

【著者】

:近頃では、少額でのリアルトレードは、デモトレードよりも真剣に市場に参加し行動できるな、と実感しております。練習をしていて、疑問が出て来ましたので、ご助言の程宜しくお願い致します。

先日、売りでエントリーし、その後、損切りのために決済しようとしました。ところが誤って、買いのエントリーをしてしまいました。

これによって、2つの注文が入った状態となり、売りでエントリーしたものは、どんどん損失が重なり、逆に買いでエントリーしたものは、どんどん利益が増え続けることになりました。

私は、一瞬パニックに陥りましたが、まずは、損失の出ている売りでエントリーしたものをできるだけ損失を小さく抑えられるところで決済しました。

続いて、利益の出ている買いでエントリーしたものを自分の中で「根拠のないトレード」として、利益もそこそこのところで決済しました。

ここで、疑問が出て来ました。利益が出ているものは「稼いでなんぼ」の投資の世界なのだから、もっと利益が伸ばせるところまで伸ばしてもよかったのではないだろうか?

矢口先生、このような状況の陥った時、プロの方ならばどのような行動をとるのでしょうか。どうぞご助言の程宜しくお願い致します。

手仕舞い決済の代わりに、反対方向に同額のポジションを持つことを「両建て」と呼びます。株式では保有の同銘柄を信用売りすることを「つなぎ売り」と呼びます。どちらも、ご質問のように、間違って反対方向にポジション持つことと同じことです。

そういう手法があるのですから、「もっと利益が伸ばせるところまで伸ばしてもよかった」と言えます。

とはいえ、プロが「両建て」や「つなぎ売り」のように、全く同じものを売り買い反対方向に持つことは基本的にありません。なぜなら、スプレッドが伸縮しないからです。つまり、期待利益がゼロだからです。

では、リスクもないかというと、売買手数料(ビッドアスク)、スリッページ、品借りコスト、加えて、相対の取引先とのデリバリー、信用リスクがあります。大きな金額を売買するプロは、デリバリー、信用リスクにも常に注意を払います。

プロが、売り買い反対方向にポジションを持つときは、スプレッドを取りに行く時です。現物と先物のスプレッド、短期債と長期債の利回りスプレッド、国債と社債の信用スプレッドなどです。上記のリスクに十分見合うと判断できれば、そういったポジションを持つことがあります。

「つなぎ売り」や「両建て」は、運用者にとって経済的な合理性がありません。経済合理性のないトレードはしないのが、長続きするプロだと言えます。営業マンが顧客に「つなぎ売り」や「両建て」を勧める場合は、口座に資金を入れたままにしていて欲しいためで、業者としては経済合理性があるのです。

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矢口 新

独自テクニカルで『相場のタイミングを捉える』 矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。