FXコラム

米シェール業者が原油先物を50ドル以上でヘッジ売り

【著者】

米シェール業者が、原油先物を50ドル以上で、2017年、2018年にかけてヘッジ売りしている。
参照:American Shale Companies’ Rush to Hedge Is Turning the Oil Market Upside Down

OPECの減産合意後、米WTI先物価格は45ドル台から51ドル台に急騰した。OPECは55ドルから60ドルで安定させたいとしており、ロシアも日量30万バレルながら、減産協力に同意した。

ここで、50ドル台や51ドル台で売ってしまい、60ドル近くになると、買い戻しを強いられるのだろうか?

私は1980年代にニューヨークで、米国の証券取り扱い資格、先物取り扱い資格、オプション取扱い資格、ニューヨーク州証券外務員資格を取得したが、先物の試験は主にヘッジ売りについての理解だった。

corn(玉蜀黍)の生産者が収穫期の値下がりに備えて、先物価格が高い時に売りヘッジをするというものだった。収穫期には反対に値上がりしている可能性はあるが、最低限の利益を確保するために、コストに見合うところからは、ヘッジ売りが出易くなってくる。

また、大規模スーパーマーケットは、pork belly(豚の脇腹肉、三枚肉)が安い時に、大量に仕入れておく。先物は腐らないので、値段に見合うところではどれだけでも買えるのだ。豚肉が値上がりすると、高い現物を買うことになるが、安く買った先物が高く売れるので、安く仕入れできたことになり、バーゲンセールもできるのだ。

シェール原油のコストは、大きくバラツキがあると言われている。20ドル台のものもあれば、100ドルを超えるものもある。コストの高い油田は、価格が下がると閉鎖に追い込まれる。採掘、閉鎖、再開の繰り返しは、余計なコストを生む。

コスト40ドルの油田は、40ドル以下になると閉鎖に追い込まれる。しかし、50ドルで売れることが確約されていると、採掘を続けることができる。いつまで? ヘッジ売りしている期間は取り敢えず安心だ。2018年まで売る業者がいるのは、その為だ。

シェール業者は、ビジネスを継続させるために売っている。70ドルになれば2019年まで売る。90ドルになれば2020年まで売る。確認埋蔵量がある限り、業者にリスクはない。高く売れれば、粗利益が増える。ビジネスそのもののリスク・ヘッジなのだ。また、先物価格が上がれば、コストに見合う油田がどんどん増えてくる。

一方の、減産側は体力勝負のチキンレースだ。体力がなければ参加できない。体力があっても、忍耐力がいる。長期的には、あまり勝ち目はなさそうだ。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。