FXコラム

トランプ次期米大統領の米国優先は、米国政治の伝統!

【著者】

明けましておめでとうございます。
私は、2017年も激動の年になるのではないかと思っている。

トランプ氏が大統領に就任すると、同氏がかねてから表明しているように、米国優先の政治が行われ、世界の秩序が乱されると懸念するとの報道がなされている。

実際に、フォード・モーター社は1月3日、メキシコでの工場新設をとりやめ、代わりに米ミシガン州の工場で電気自動車と自動運転車をつくると発表した。同フラットロック工場への新規投資額は7億ドルで、新たに700人を直接雇用する計画のようだ。フォードはメキシコの新工場で小型車をつくり米国に逆輸入する計画だったが、トランプ次期米大統領はこれに高関税をかけると公言していた。

また、トランプ次期米大統領は3日、自身のツイッター上に「米ゼネラル・モーターズが米国で売るメキシコ製『シボレー・クルーズ』には高関税をかけてやる」との声明を投稿した。トランプ氏の投稿を受けGMは「米国で売られているクルーズのセダン型はすべて米オハイオ州でつくっている。ハッチバック型はメキシコ製だが、米国での販売はわずかだ」と反論するコメントを発表した。

フォードの件はともかく、高関税を導入しても、「米国での販売はわずか」なGMに実害はほとんどない。

では、これまでの米国は自国を犠牲にしてまで、世界の秩序維持に努めてきたのだろうか? 例えば、イラクの故フセイン大統領は専制君主だったので、民主主義のために、事実に反する制裁理由をでっちあげてまで処刑したのだろうか? またシリアのアサド大統領もまた専制君主なので、反政府勢力を支援し、国内を内乱状態に追いやったのだろうか?

しかし、その一方で、アラブの春を軍事クーデターで潰したエジプトの軍事政権は支え続けている。2014年米国の海外支援はエジプトがイスラエルに次ぎ2位。2015年の兵器輸出はカタールに次ぎ2位だった。つまり、エジプトでは民主主義を潰し、イラクやシリアでは民主主義ではないとして、両国を戦場に変えた。

また米国は、脱税に当たるとして、米富裕層が持つ海外のオフショア口座の情報開示を要求、カリブ海やスイスの隠し口座を炙り出してきた。一方で、金融機関の情報開示の新世界基準を受け入れないと表明することで、世界の富裕層の隠し口座を呼び込み、今は米国が世界の隠し口座市場を牽引している。

ロンドンの弁護士からスイスの信託会社に至るすべてが参入し、世界の富裕層のオフショア口座を、これまでのバハマ諸島や英領バージン諸島といった租税回避地から、ネバダ州、ワイオミング州、サウスダコタ州に移す手助けをしている。
参照:The World’s Favorite New Tax Haven Is the United States

スイス・ユニオン銀行(UBS)などの秘密口座は、UBSなどの力の源泉だとして、米銀などから羨望の眼差しで見られてきた。秘匿できるだけの資産を持つ富裕層には有利なシステムで、情報開示により平等な課税を行うという米国の政治には大義名分があった。それなので、今日のブルームバーグに載っていた上記の記事は驚きだった。恥ずかしながら、記事の日付(2016年1月27日)を見て、更に驚いた。知らなかったのは、私だけだったのかも知れない。

トランプ氏が大統領になると、さらにあからさまに自国優先となるのだろうか? そうかも知れない。しかし、米国が世界の監督庁、警察として公正に、悪を裁くと信じる人が少なくなり、真の姿に向かい合えるようになることは、決してマイナスではない。嘘の大義名分に付き合わされるのではなく、力関係を認識しながらも、ウィンウィンにつながる対応ができるのだから。

【みんかぶマガジン】矢口氏のコラム
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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。