FXコラム

ドル円、日本株、2016年の回顧と、2017年の見通し

【著者】

2016年の金融市場は内外ともに大変な年だった。一般的には、バブル崩壊やリーマンショックに比べれば大したことがなく、また、実際の値動きにも特筆すべき点はないのだが、長年、相場に携わってきた人間には、空前の年だったのだ。

バブル崩壊や、リーマンショックの原因となった米サブプライムショックは、予測可能だった。実需が示唆している以上に、それも大幅に買い続ければ、バブルはいつか崩壊する。
日本株、不動産バブルの崩壊や、サブプライムショックを事前に予測していた市場関係者は多数いた。

しかし、2016年に起きたことは、少なくとも1、2年前に予測できていた人は、ほとんどいない。そんな大きな出来事を3つ挙げると、1)日銀のマイナス金利政策、2)ブレグジット、3)トランプ氏の米大統領選勝利だ。

1)マイナス金利政策は、理論的には可能だった。しかし、借り手が貸し手から金利を受け取るという政策は、市場機能、市場経済の否定だ。そんなことが認められると、貸し手である銀行の経営基盤が揺らぐことになる。実際に、日銀は「地銀の6割以上が本業で赤字になる」と予測した。まさか、銀行を束ねる中央銀行が、そのような行動に出るとは思わなったのだ。

マイナス金利政策を先行して導入した欧州では、銀行経営が危機的な状況だ。大手銀行は軒並みコスト削減を強いられ、世界最大の銀行の1つドイツ銀行でさえ、経営不安が囁かれている。

2)ブレグジットは、英国民が欧州各国の連合体に見切りをつけたものだ。欧州は単一通貨、単一金利政策における不公平が、許容できないところまで広がっている。また、統一に向けての国境検査の廃止が裏目に出ているので、移動の自由や、移民政策にも何らかの対策を迫られている。ギリシャやスペイン、イタリアは、それらによって大きく国力を失った。

驚きだったのは、欧州連合体に最初に見切りをつけたのが、ユーロ圏ではない英国だったことだ。独自の通貨、独自の金利、独立した経済政策を持つ英国は、欧州のみならず、先進国で1、2を争う経済優等生だった。その英国が、EU離脱による(少なくとも短期的な)デメリットを受け入れてでも、EUを見切ったのはショックだった。特に、メディアが行っていた圧倒的な残留支持の報道が敗北したことは印象的だった。

3)トランプショックも同様だ。メディアの論調を見る限り、トランプ氏の米大統領選勝利は、当初からほぼゼロの確率だった。トランプ氏を支持したのは、古き良きアメリカ、米国の屋台骨を背負ってきた、白人中間層だった。最新の調査では、米国人の平均寿命が22年ぶりに低下した。顕著なのは、中年白人層の死亡率上昇で、この層では、1998年から2013年にかけて死亡率が毎年0.5%上昇しているとのことだ。肥満や健康問題だけでなく、自殺や薬物の過剰摂取、アルコール中毒の急増が要因だ。米国の既存システムが機能していない。米国人は共和、民主両党の既存政治家を信じず、リスクを取って、トランプ氏に米国の将来を委ねたのだ。

2016年は他にも、中国懸念、原油安、債券から株式への資金大移動、OPECと非加盟国の減産合意、イタリヤ国民投票、米利上げなど、年末にかけても、ビッグイベントが目白押しだった。

これらのことは、2017年にも引き続き懸念であり続ける。

日欧の金融政策は、少なくとも、2017年いっぱいは緩和的だ。超低金利と量的緩和が続く。これは、銀行経営の難しさと、カネ余りとを意味する。銀行は生き残りのために、投機的にならざるを得ず、その成否が、経営そのものを左右する。

引き続くカネ余り、日銀のETF買い、GPIFの株式投資は、2017年も日本株の下支え要因だ。また、2016年9月期まで日本株の頭を抑えてきた海外投資家が、10月以降は買いに転じている。市場はトランプラリーだとしているが、クリントン氏勝利でもラリーとなった可能性があるほど、このラリーの腰は強い。

主体別売買動向
(主体別売買動向)

ドル円は、日米金利差の拡大も上昇要因だ。日銀の金融政策が緩和的である一方で、米連銀は2017年3回ほど利上げするとしている。ここに国内での運用難、投機的傾向を加味すれば、M&Aを含む外貨投資は、2017年は活発であり続ける可能性が高い。

こうした要因を見ていくと、2017年は円安、株高トレンドになりそうだ。とはいえ、主要国の金融政策の是非、欧州政治と地政学的リスク、原油減産の継続性、トランプ氏の手腕などを鑑みると、相場は「荒れる」と見ていた方が良さそうだ。短期トレードで山越え確認、谷越え確認での売買を繰り返すか、売られた所を買う押し目買いが機能するかと思う。

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矢口 新

矢口 新

大学卒業後、国内外の大手証券会社にて為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤めた後、株式会社ディーラーズ・ウェブを創業(2002年5月~2013年5月)。2013年4月まで同社代表取締役社長。