トランプ大統領の非常事態宣言は何が異例か

 米国のトランプ大統領が16日、米国南部国境の壁の建設に絡んで国家非常事態宣言を行いました。
 トランプ大統領が公約としてきた国境の壁建設ですが、民主党の強い反発もあって、大統領が望んだ57億ドルの壁建設予算が認められず、12月19日から35日間にわたって連邦政府機関が一部閉鎖に。政府機関閉鎖解除のための暫定予算が成立し、2月15日までの予算期限までに共和党・民主党の超党派での議論を続けてきましたが、認められた予算は13.75億ドルと、大統領の希望を大きく下回るものとなりました。
 大統領はこの結果に対して、予算自体は署名し、連邦政府機関の再閉鎖を回避したものの、国家非常事態宣言を行うことで壁建設の予算を確保するという手段に出た形です。

 非常事態宣言というとかなり深刻なワードに聞こえますが、実は同宣言自体は比較的よく実施されています。
 米国の場合、予算は大統領が参加できない議会によって決められることが憲法で規定されており、大統領といえど、平時は自由に使うことは出来ません。とはいえ、様々な事態に対応するために、議会採決を通さない国家予算の使途決定などが必要な場面が生じるため、1976年に成立した国家非常事態法によって、非常事態宣言を行うことで、大統領に平時にはない権限を与える規定になっています。
 
 2000年代でいうと、2001年の同時多発テロ事件直後にブッシュ大統領が非常事態を宣言しました。こうしたテロなどの事件だけではなく、2009年にはオバマ大統領が豚インフルエンザの感染拡大に対して宣言を行うなど、様々な事態に対応するものとなっています。トランプ政権下でも昨年11月のニカラグアでの反政府デモ弾圧に際して、関係者の米国内での資産を凍結するために実施するなど、3件の非常事態宣言が実施されています。

 では、今回は何が異例なのか。
上にあげた例に見られるように、一般的には予算編成時には想定していない突発時に対応するために実施されるものであり、予算編成時に議会で討議されたうえで決定した事項に対して、大統領が自身の意見を通すために実施するという状況が異例なのです(議会の決定が不服であれば、通常は拒否権で対応します。今回は拒否権を発動すると連邦政府機関が再び閉鎖されるため、予算自体は認めるという対応になりました)。

 これが大統領権限として認められるものなのかどうか。非常事態法自体には非常事態の定義がないため、大統領としては正当な権利の行使を主張、議会は反発という状況になっています。こちらについては今後の動向を注視といったところ。ただ、そもそも市場に大きな影響を与えるのかという観点では微妙といったところ。政治的な混乱が大きなものにならないようであれば、いったんは様子見でいいかもしれません。

 

山岡和雅 | minkabu PRESS編集部

山岡和雅 | minkabu PRESS編集部

1992年チェースマンハッタン銀行入行。1994年ロイヤルバンクオブスコットランド銀行(旧ナショナルウェストミンスター銀行)移籍。10年以上インターバンクディーラーとして活躍した後にGCIグループに参画。2016年3月よりみんかぶ(現ミンカブ・ジ・インフォノイド)グループに入り、現在、minkabu PRESS編集部外国為替情報担当編集長。(社)日本証券アナリスト協会検定会員 主な著書に「初めての人のFX 基礎知識&儲けのルール」すばる舎、「夜17分で、毎日1万円儲けるFX」明日香ビジネスなど メールマガジン「外国為替ディーラーの心の中」( https://www.mag2.com/m/0000094647.html )を毎営業日朝に好評配信中